dimanche 10 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 15 1918年スペイン風邪ウイルスの同定

昨日、1918年のパンデミックについて触れた。世界の人口の1/3 が感染し、死者が1億人に上るとも言われる当時の状況について、"Flu: The Story of the Great Influenza Pandemic" の著者でもあるNYT の科学記者ジーナ・コラータ (Gina Kolata) 氏が語っている記事があったので紹介したい。そのウイルスがH1N1であることがわかるまでの興味深い話が出ている。


1918年にはウイルスは分離・同定されておらず、原因はわかりませんでした。犠牲者とともにウイルスも死んでしまうと考えるでしょうが、南北戦争の時にリンカーンが犠牲者の人体組織を永久に保管する巨大な貯蔵庫を作っていました。1990年代、米軍病理学研究所の研究者ジェフリー・タウベンバーガー (Jeffrey Taubenberger) が1918年のスペイン風邪の犠牲者の肺組織を調べることができないかと考え、1996年のある日、研究所でスペイン風邪犠牲者の2人の兵士の標本を見つけるのです。

これ以前の出来事ですが、1950年代にスウェーデンのヨハン・ハルティン (Johan Hultin) と彼の前妻がアラスカに旅行し、当時のすべて犠牲者が埋められている墓地があることを知ります。彼はその墓を掘り起こして、スペイン風邪について博士論文にまとめられないかと考えました。危険も顧みず卵でウイルスを増殖させようとしましたが何も起こらず、いずれ科学が進歩すれば誰かがやるだろうと考えていました。そして1997年、タウベンバーガーのグループによる Science 誌の報告を見ることになるのです。

それからハルティンはアラスカに戻り、材料をタウベンバーガーに送り、米軍兵士2人とアラスカの先住民族の女性の3人からウイルスを同定することになるのです。そこで全く同じ遺伝子配列とその他のウイルスが明らかになりました。

現在このウイルスはすでに死んでいるので、ここからの感染を心配する必要はありません。

1918年当時は交通機関も発達していなかったのに、どのように感染が広がったのかという点ですが、完全に隔離された場所でも感染が起こっています。アラスカの先住民族の場合がそうですが、すべての人が感染したにもかかわらず、成人の大半が亡くなっています。感染した郵便配達人が風邪を広めた可能性があります。当時は飛行機による旅行はありませんでしたが、第1次大戦で軍隊の移動がありました。現在の感染でもそうですが、なぜ感染が広がったのかについてよく分からないことがあります。記録が曖昧で、よいものがないのです。そのため死者が2500万人から1億人という幅を持っているわけです。特にアメリカの以外の状況はほとんどわかりません。

私がこの話を書いた動機ですが、スペイン風邪のウイルスが蘇ったことに興味を持ったからです。科学の素晴らしさを示すものだと思います。ここに、これまで裁かれなかった大量殺人の犯人がいたのです。それは科学的殺人ミステリーで、そこに探偵がいたのです。

現在の状況に恐怖を感じるかということですが、心配することは何の解決にもなりません。秋にスペイン風邪のようになって戻ってきた場合、ワクチンがあるでしょう。世界には新興性感染に対して素早く対応する能力があると思います。

この話を書くまではインフルエンザ・ワクチンを受けたことがありませんでしたが、「なぜそうしなかったのか、バカ者!」 と自らに言っていました。それ以来、年に一回受けています。この本の執筆により、ワクチンに対する考え方が変わりました。

皆さんは何でも風邪 (flu) と言って済ませ、季節性インフルエンザの深刻さが見過ごされているようにも思います。私の経験から言うと、頭痛、筋肉痛などの耐えられない痛みがあり、酷いものです。


Flu Lessons from 1918 (NYT, May 8, 2009)
Secret of the Dead: Killer Flu (Washington Post, November 22, 2005): タウベンバーガー氏についての記事

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