mardi 2 février 2010

エルンスト・ヘッケルの歩みを読み始める




Robert J. Richards

エルンスト・ヘッケル(1834年2月16日 ポツダム - 1919年8月8日 イェーナ)の伝記を読み始める。読み終わった最初の章には、どのような姿勢で幅広い領域で活躍したこの複雑な人物に迫ろうとしたのかが語られている。ヘッケルと言えば、ドイツにおけるダーウィン主義の普及に大きな役割を担い、その解釈がナチに繋がったとも言われている生物学者で、個体発生は系統発生を繰り返す、という有名な言葉を残している。また、エコロジーの概念を確立した人とされている。

この本で著者は、ヘッケルがなぜダーウィン主義をまるで信仰のように受け入れたのかに答えを出そうとしている。そのためには科学的な視点だけではなく、それを生みだした人間の深奥に迫るという方法を取るようだ。そこには本書のタイトルにもなっているヘッケルの人生に対する悲劇的な見方があったのではないか。そこから逃れるために、超越性へと向かったのではないか、というような結論が語られるようだ。そこに至るまでに500ページが準備されている。

このようなアプローチを取ったものとして、Thomas Söderqvist 氏によるニールス・イェルネの伝記 Science as Autobiography: The Troubled Life of Niels Jerne (Yale Univ Press, 2003) を読んだことを思い出す(10 juin 2008)。イェルネが科学の上で生み出したものは、彼の内奥に潜む人間を表現したものであったという捉え方である。科学と人間を分けて扱うのが謂わば科学的な伝記の書き方であるような印象を持っていたが、この二つは不可分に結びついているとするこれらの流れは私には興味深いものがある。


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(21 novembre 2010)



Prof. Robert J. Richards (Univ. of Chicago)


上のお話のその後になる。今年の10月上旬、カナダのロンドンで開かれた科学の歴史と哲学に関する会議で著者のロバート・リチャーズさんにお会いし、この本の感想についてお伝えした。話し振りは非常に快活で、論旨がしっかりしている。お話した印象は柔らかいものであったが、ナンセンスなものは受け付けないという強いところがあるように感じた。


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